イタリア彫刻というと、わが国ではすぐにマリノ・マリーニ、ジャコモ・マンズー、エミリオ・グレコ等の作品を思い浮かべる人が多いようだ。しかし、イタリア本国では彼らとともに、否ある意味では彼等以上の重要度をもって、もう一人のきわめて優れた彫刻家の名が挙げられるのが常である。その彫刻家とは、いうまでもなくペリクレ・ファッツィーニ(1913年〜1987年)である。彼は、近現代の偉大なるイタリア具象彫刻の山脈にあって、バロック的躍動感のうちに幻想性と、脱俗性を表わしてきた。人間精神のもっとも奥深い、聖なる部分に肉迫するその芸術は、われわれ日本人にとって必ずしも馴染みやすいものではないかもしれない。宗教的ひいては芸術的体験の乏しさが、その圧倒的なエネルギーに近づくことを困難に思わせてきたのだろう。
本展は、このような事情で、これまで日本にほとんど紹介されてこなかった「もう一人の巨匠」ファッツィーニの全体像を、ローマ国立近代美術館の共催のもとに初めて明らかにしていこうとするものである。
本展は、このような事情で、これまで日本にほとんど紹介されてこなかった「もう一人の巨匠」ファッツィーニの全体像を、ローマ国立近代美術館の共催のもとに初めて明らかにしていこうとするものである。