[カタログ/1995年発行]
-開催概要から-
アフリカ美術といえば、まずはあの仮面や彫刻を思い起こします。けれども、今日にあって、これら伝統的な造形は、アフリカ美術のごく一部にしかすぎません。私たちの時代のアフリカ美術とは、ではいったいどのようなものなのでしょうか。
アフリカ美術の現状は、大きく二つの流れに分けることができます。ひとつは、美術学校で専門の美術教育を受けた、その意味でアカデミズムと呼ぶことのできる作家たちによる絵や彫刻であり、もうひとつは、そうした美術教育とは無縁の、市井の職人たちの手による多種多様な造形群です。
日本ではあまり知られていませんが、この枠組みをさらに推し拡げてみるならば、下町の店先に揺れる色鮮やかな看板、トラックや乗り合いバスのボディを飾る陽気なペンキ絵たち、一方街行く女たちの黒い肌に映える極彩色の衣装、あるいはディスコでリズムに酔い痴れる人々の表情に至るまで、多彩な意匠が浮かび上がってきます。
本展では以上の点を踏まえた上で、広大なアフリカ大陸のうち西アフリカと中央アフリカに地域を絞り、今世紀初頭から最近にまでおよぶ絵画、立体その他様々な造形約140点を、概ね4つの時期に整理して展覧いたします。こうして、これらの地域における美術の20世紀を私たちの目でつぶさに検証することにより、アフリカ美術の現在を、そしてそこに交錯する眼差しの軌跡を透視してみたいと考えています。
幸いなことに、日本とアフリカの交流の機会は日ましに増えつつあります。それだけに、アフリカ美術の同時代と正面から向き合おうとする本展は、アフリカ文化をより深く理解するための確かな足ががりを提供する試みとして、歴史的な意義を有するものと確信いたします。
アフリカ美術の現状は、大きく二つの流れに分けることができます。ひとつは、美術学校で専門の美術教育を受けた、その意味でアカデミズムと呼ぶことのできる作家たちによる絵や彫刻であり、もうひとつは、そうした美術教育とは無縁の、市井の職人たちの手による多種多様な造形群です。
日本ではあまり知られていませんが、この枠組みをさらに推し拡げてみるならば、下町の店先に揺れる色鮮やかな看板、トラックや乗り合いバスのボディを飾る陽気なペンキ絵たち、一方街行く女たちの黒い肌に映える極彩色の衣装、あるいはディスコでリズムに酔い痴れる人々の表情に至るまで、多彩な意匠が浮かび上がってきます。
本展では以上の点を踏まえた上で、広大なアフリカ大陸のうち西アフリカと中央アフリカに地域を絞り、今世紀初頭から最近にまでおよぶ絵画、立体その他様々な造形約140点を、概ね4つの時期に整理して展覧いたします。こうして、これらの地域における美術の20世紀を私たちの目でつぶさに検証することにより、アフリカ美術の現在を、そしてそこに交錯する眼差しの軌跡を透視してみたいと考えています。
幸いなことに、日本とアフリカの交流の機会は日ましに増えつつあります。それだけに、アフリカ美術の同時代と正面から向き合おうとする本展は、アフリカ文化をより深く理解するための確かな足ががりを提供する試みとして、歴史的な意義を有するものと確信いたします。
目次
「序論」川口幸也
「ポスト=コロニアル時代のアフリカ現代美術」デレ・ジェゲデ
「セネガルの現代造形美術―状況と展望」アブドゥ・シィラ
「オショボ」ウリ・バイアー
「ヴォウヴォウ」クラ・ンゲッサン
カタログ
I. プロローグ
II. フリー・スクールの時代
III. 伝統とモダニズム
IV. アートを超えて
「所感:アフリカと私の今―ムスタファ・ディメの作品から」古川秀昭
「私が見たアフリカ「美術」の一断面」菅野洋人
「アフリカの感性―その静かな一面」吉原美惠(旧字:恵)子
「アフリカの新しい伝統:いま、アビジャンのストリートから」鈴木ひろゆき
「インサイド・ストーリーあるいはオーセンティシティの神話」川口幸也
関連年表
主要参考文献
奥付
編集:
川口幸也(世田谷美術館)、吉原美恵子(徳島県立近代美術館)、平瀬礼太(姫路市立美術館)、菅野洋人(郡山市立美術館)、白川洋二(丸亀市猪熊弦一郎現代美術館)、古川秀昭(岐阜県美術館)
和文英訳:スタンリー・N.アンダソン
デザイン:近藤一弥
制作:コギト
発行:美術館連絡協議会、読売新聞社 ©1995