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刊行物

『内井昭蔵の思想と建築 自然の秩序を建築に』

[カタログ/2009年発行]

-開催概要から-

世田谷美術館を設計した建築家の足跡をたどる

「健康とは〈生きているもの〉の価値基準である。人は病んだとき初めて健康の喜びや健康の価値を知るのであるが、このごろの建築をみていると、つくづく健康な建築の必要性を感じる。最近の建築はどこか病んでいるようだ。人間と建築とを同一に考えることはできないが、健康という価値基準を建築にあてはめることはできる と思う」。これは、内井昭蔵が著した「健康な建築」の冒頭です。彼の建築家としての思想を端的に示し、その造形が生成されていく根源にふれる言葉です。
明治時代に正教会の建築を手がけた祖父・河村伊蔵、そして建築家・内井進を父にもつ内井昭蔵は、建築家として1967年に独立し、2002年に急逝するまでの35年間、多くの作品を手がけつつ、京都大学などで後進の指導にもあたり、日本の建築界に多大な貢献を果たしました。初期の代表作≪桜台コートビレジ≫(1970)をはじめ、≪身延山久遠寺宝蔵≫(1976)、≪世田谷美術館≫(1985)、≪国際日本文化センター≫(1991)、≪御所≫(1993)、≪大分市美術館≫(1998)などの優れた設計は国内外から高い評価を得ました。
内井昭蔵は建築に合理性を求めるだけでなく、 自然の秩序を意識し、そこから生じてくる装飾を丹念に建築にとりこみました。建築が人間にとって親しみやすい存在であることを思い、人間と建築が馴染みあう空間を築くことを、心から大切にした建築家であったといえましょう。
本展では「内井昭蔵の思想と建築」をキーワードとし、その歩みを設計図面、写真、模型、映像などを通じて回顧します。

目次

「あいさつにかえて」酒井忠康

「内井昭蔵の思想と建築展 ノート」橋本善八

「内井昭蔵の建築と、彼の建築史観との関わり」長谷川堯

「「内井昭蔵の思想と建築」展によせて」梅原猛

「昭蔵と暮らした43年」内井乃生



図版

■1-内井昭蔵の思想と建築

「自由と平等の調停:マスターアーキテクト方式」北尾靖雅

■2-祖父、河村伊蔵、そして父・内井進

「河村伊蔵・内井進 略年譜」

「芸術・社会貢献建築家 内井昭蔵」仙田満

「環境建築 意匠の伝道師」西川幸治

「長谷木記念幹の建築をめぐって」長谷川晴一



資料

再録・内井昭蔵の著述

内井昭蔵 略年譜

内井昭蔵 主要自筆文献

内井昭蔵 全249作品および掲載図版リスト



奥付

編集:橋本善八、矢野進、嶋田紗千、横山由季子(世田谷美術館)

編集特別協力:内井建築設計事務所

編集補助:石井美佳、伊藤雄亮、鈴木春菜、滝ほなみ、竹内奏絵

資料撮影:尾身重治、大塚敏幸(エス・アンド・ティフォト)

制作・デザイン:今村裕、川添英昭、名塚雅絵(美術出版社)

発行:世田谷美術館

©2009 Setagaya Art Museum

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