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企画展(終了)
憧憬、友情、孤独、苦闘、革新…。夭折の青年画家と異都パリの画家群像 1950年代初頭、戦後の荒廃の中から新しい時代の息吹を求めて、芸術の都パリへと渡った一群の画家たちがいました。戦前のパリに滞在経験のある者、またあこがれのパリをめざす若き画学生たち。彼らは一様に異都の貧しい生活の中、新時代の芸術表現を模索するという状況を共有しつつ、支え合い、論争し、苦闘したといえるでしょう。その中でも、東京大学で経済学を学び、ソルボンヌの法学部に留学した金山康喜(1926-1959)は、異色の存在でした。渡仏前から新制作派協会展に出品していた金山は、渡仏後アンデパンダン展、サロン・ドートンヌ展へ出品し、清冽な色彩をたたえた独特の静物画によって早くも頭角を現わします。とりわけ藤田嗣治にはその才能を高く評価され、かわいがられました。しかし病を得て静養を余儀なくされ、復帰後一時帰国のつもりで戻った東京滞在中に、突然の死を迎えます。あまりにあっけない金山の画業の終焉は、戦後日本画壇の急激な変革の波の中でともすれば忘れさられがちであったと思います。本展は、33歳で急逝した画家の才気あふれる作品約70点を、彼と同時代のパリを共有した13人の画家たちによる約70点とともに展示いたします。戦前より活躍した先輩格の藤田嗣治、荻須高徳を始め、青春をともにした田淵安一、野見山暁治、そしてまったく新しい表現に身を投じたアンフォルメルの画家、今井俊満、堂本尚郎など、具象、半具象、抽象が入り乱れる50年代のパリ画壇において、金山康喜という個性が今日も色あせることのない独特の輝きを放っていることを実感していただけることでしょう。
イベント(終了)
戦後パリに渡った日本人音楽家の活動を紹介するトーク付のコンサート。第1部では1950年代のパリで生まれた日本人作曲家たちの作品と、同時代のフランス音楽をトークとともに室内楽でお聴きいただきます。第2部は出演者とともに歓談するワインと軽食つきの夜会。曲目:・矢代秋雄 弦楽四重奏曲(1955)より第3楽章・ダリウス・ミヨー ヴィオラ・ソナタ第2番 Op. 244(1944)より第2楽章、第3楽章・オリヴィエ・メシアン 『幼子イエスに注ぐ20の眼差し』(1944)より第15曲「幼子イエスの口づけ」・三善晃 弦楽四重奏曲第3番『黒の星座』(1989/92)
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油絵風のマグネットを制作します。小さなお子様から大人の方まで、その場でどなたでも参加できます。展覧会のおみやげにどうぞ。
刊行物
目次「カナヤマ」野見山暁治「金山康喜のパリと1950年代の日本人画家たち」橋秀文図版I 金山康喜 1926-19591-1 高校・大学時代から新制作派時代 1943-1950金山康喜のこと―妹・千重子の回想1-2 パリ時代 1951-1959II 1950年代のパリの日本人画家たち「未完の風景画/未完の金山康喜」杉野秀樹「金山康喜の遺品調査を終えて」渡辺希利子「田淵安一の東京とパリ 渡仏前後の作風の変遷をたどる」西澤晴美金山康喜年譜用語解説関連地図1950年代渡仏芸術家・文化人フランス滞在時期一覧主要文献目録出品リスト奥付編集:神奈川県立近代美術館、富山県立近代美術館、世田谷美術館、東京新聞執筆:野見山暁治、橋秀文(神奈川県立近代美術館)、西澤晴美(神奈川県立近代美術館)、杉野秀樹(富山県立近代美術館)、渡辺希利子(富山県立近代美術館)、遠藤望(世田谷美術館)翻訳:マーサ・マクリントクデザイン:桑畑吉伸制作:リーヴル発行 東京新聞©2015
ブログ
世田谷美術館では2003年より小学校4年生~中学生を対象とした夏休みイベント「ナイトツアー」を開催しています。コロナ禍の今年はオンラインで実施しましたが、それまでのナイトツアーはどのように行われていたのかを振り返ります。今回は2015年に『金山康喜のパリ』(2015年7月18日-9月6日)展に関連して開催したナイトツアー2015「金山さんとの約束」の内容をご紹介します。なお、この文は2015年に発行された当館ニュースレターに掲載されたものです。2015年8月29日、夏の最後を締めくくる当館の名物イベント「ナイトツアー」が行われました。このイベント、もともと当館のボランティア=鑑賞リーダーからの提案で始まりました。動物園で夜に活動する動物たちを見るのと違って、窓もない美術館の展示室というのは、昼だろうが夜だろうが、基本的に変わりはないのです。違いがあるとすれば、他にお客様がいないこと。つまり、貸切であることです。鑑賞リーダーからよく聞く不満は、子どもたちを案内するときに感動の声すら遮らなければならないこと。さわっちゃいけない、はしっちゃいけない、大きな声でさわいじゃいけない、この3大タブーのうち、3つ目だけは夜の美術館では許されるのです。年に一度、思いっきり子どもたちに美術館を楽しんでもらうのが、当館のナイトツアーです。ゲーム感覚で謎を解きながら、作品の本質を味わっていく、という特別な鑑賞ツアーなのです。では、2015年のナイトツアーを紙上ドキュメントでご体験いただきましょう。18:30 ナイトツアースタート!参加者は事前に募集した小学4~6年生45名。閉館後、受付で名札をもらって講堂へ。同じ色の名札の4,5人で1グループとなります。18:40 展覧会紹介ビデオの怪まずは、開催中の『金山康喜のパリ』展の紹介ビデオを見ます。展覧会の担当学芸員が金山の作品と人生を語ります。「33歳という若さで死んでしまった金山さんはどんなに無念だったでしょう。きっと、もっともっと絵が描きたかったに違いありません・・・」。すると途中で突然、画面が乱れ、薄暗い部屋に人影らしきものが映ります。「・・・ぼくはもっともっと絵を描きたかった。子どもの頃からやりたいことをちゃんと考えておけば良かった」と独白するこの人物は金山の亡霊でしょうか? 彼は、紙を破っては名札のようなものに詰め込んでいます。いったい何をしているのでしょう?18:50 第1の謎会場に明かりが戻るやいなや、子どもたちは自分たちの下げている名札を見ます。さっきのビデオで謎の人物が何かを入れていたのはこの名札じゃなかっただろうか?中を探ると紙の破片が。グループ全員の紙片をつなぎ合わせると美術館の地図が現れました。第1の謎19:00 金山の亡霊グループにひとつだけの懐中電灯を頼りに、真っ暗な館内を地図の指示通りに進んでいくと地下のある部屋にたどり着きます。部屋に入ると、先ほどビデオに写っていたのと同じ人影が・・・。その人物は無言のまま、彼らに封筒を手渡します。金山の亡霊19:10 指示書の解読封筒にある指示に従い、手に入れたカードキーで関係者以外立入禁止のバックヤードの扉を開けます。いよいよ美術館の裏側へ。指示書の解読19:20 夜の美術館夜の美術館のバックヤードには怪しい人たちがたくさんうごめいています(もちろん、演出です!)。バックヤードでは、巨大エレベーターや収蔵庫、秘密の扉などを守る「番人」たちからの数々の難題をクリアし、キーワードやアイテムを手に入れて、展示室まで進んでいきます。収蔵庫の番人19:40 金山の亡霊への誓いついに展示室。金山康喜の絵に描かれているモチーフをすべて集め「最後の扉」を開けると、そこに再び金山の亡霊が現れ、「君たちが33歳までに叶えたいことをぼくに誓ってくれ」と言います。ひとりずつ「わたしは絵をたくさん描きます」「ぼくはサッカー選手になります」「結婚して子どもを3人持ちます」など、夢を声に出します。「早くに目標を持ってがんばれば、きっと叶う。君たちは悔いのない人生を生きて」と金山の亡霊は子どもたちにメッセージを伝えます。金山の亡霊への誓い20:00 エンディング全員が金山への誓いを終えると、明かりが付きます。既に金山の姿はなく、彼の作品だけが並んでいます。子どもたちは金山が33年という短い人生の中で、魂をそそいで描いた作品をじっくり鑑賞するのでした。ゲームクリア後の作品鑑賞余談ですが、金山の亡霊役をやった某学芸員は、当初嫌々引き受けたものの45人もの子どもたちから真剣に夢を誓われ、思わず感涙したそうです。デジタルコンテンツ「セタビチャンネルJr.」にもどる→こちら