[カタログ/2014年12月6日発行]
-開催概要から-
ときに非常に広大で、またときにきわめて深遠な、独創的なイメージの世界が、展示室いっぱいに拡がります。
今や遠い過去となった1960年代は、国内外の若者たちがあらゆるジャンルにおいて、こぞって新しい思想や感性を表出させた特異な時代でした。その60年代に青春期を過ごし、研ぎ澄まされた視覚と言語感覚をもって独自の世界を逍遥していたのが、知られざる青年画家・難波田史男(1941-1974)です。不慮の事故により32歳の若さで他界してしまいましたが、15年足らずの短い活動期に、2,000点を超える作品を描き残しました。
その多くは水彩とインクを使った空想世界の描写です。写実や構成といった絵画の基本をよそに、史男は内から溢れ出るイメージの数々を、一貫して自由なスタイルで描いています。画家として大成することを目指すというよりは、想像世界をひとり遊歩しながら、創作による冒険を重ねていたといってもいいでしょう。その背景には、旺盛な読書やクラシック音楽から得たインスピレーションもあったようです。また、日記やノートに刻まれた随想や詩篇にも、絵画作品と響き合うかのような史男独自の言葉の世界が拡がっています。
本展では、当館が所蔵する全800点余の史男作品のなかから、秀作・約300点を選りすぐって展覧します。短い画歴のなかでも、その作風はときに大きく変化し、人知れず葛藤を重ねていた無名の青年画家ならではの、果敢な実験の軌跡を見てとることができます。「自由」のみを糧に、遠く深く未知の世界へと冒険を繰り返した史男という存在に、没後40年を経た今、わたしたちは改めて新鮮な驚きと共感を覚えることになるでしょう。
不条理の最高の喜びは創造である。
この世界に於いては、作品の創造だけがその人間の意識を保ち、その人間のさまざまな冒険を定着する唯一の機会である。
創造すること、それは二度生きることである。
史男、27-28歳頃、1968-69年頃のノートより
その多くは水彩とインクを使った空想世界の描写です。写実や構成といった絵画の基本をよそに、史男は内から溢れ出るイメージの数々を、一貫して自由なスタイルで描いています。画家として大成することを目指すというよりは、想像世界をひとり遊歩しながら、創作による冒険を重ねていたといってもいいでしょう。その背景には、旺盛な読書やクラシック音楽から得たインスピレーションもあったようです。また、日記やノートに刻まれた随想や詩篇にも、絵画作品と響き合うかのような史男独自の言葉の世界が拡がっています。
本展では、当館が所蔵する全800点余の史男作品のなかから、秀作・約300点を選りすぐって展覧します。短い画歴のなかでも、その作風はときに大きく変化し、人知れず葛藤を重ねていた無名の青年画家ならではの、果敢な実験の軌跡を見てとることができます。「自由」のみを糧に、遠く深く未知の世界へと冒険を繰り返した史男という存在に、没後40年を経た今、わたしたちは改めて新鮮な驚きと共感を覚えることになるでしょう。
不条理の最高の喜びは創造である。
この世界に於いては、作品の創造だけがその人間の意識を保ち、その人間のさまざまな冒険を定着する唯一の機会である。
創造すること、それは二度生きることである。
史男、27-28歳頃、1968-69年頃のノートより
目次
はじめに
図版
水彩・素描
第1部 異次元の未来世界へ 1960-1966
第2部 内なる物語世界へ 1967-1973
油彩 1960-1974
版画 1963-1973
論稿・資料
「擦れ違った画家―難波田史男」酒井忠康
「難波田史男作品と世田谷美術館」清水真砂
「難波田史男の世界―「裸形された意識」が描く」杉山悦子
難波田史男 随筆(再録)「青春の思索」
難波田史男 写真アルバム
難波田史男 略年譜
難波田史男 個展歴
難波田史男 主要文献
出品作品目録
奥付
執筆:酒井忠康、清水真砂、杉山悦子
翻訳:ルイザ・ルビンファイン
撮影:上野写真事務所(上野則宏、上野紘史郎)
編集:杉山悦子、清水真砂、遠藤望
編集補助:新宮和聖、安達裕美佳、坂入友里恵
校閲:岩田高明
デザイン:馬面俊之
制作:リーヴル
発行日:2014年12月6日
発行者:世田谷美術館
© Setagaya Art Museum, 2014
1500円(税込)