1985年、97年にわたる生涯を閉じたシャガールは、20世紀を代表する画家の一人としてしられております。その死後、手元に残されていた作品は、遺族の手によって相続税の代納として国家に納められました。画家が生前決して手放そうとはしなかったこれらの作品の中には、初期から晩年にいたる名作の数々が含まれており、それだけに画家の精神の深層が開示されているものと思われます。今回の展観は、そのうちの代表的なものに、従来からのパリ、ポンピドーセンター国立近代美術館の収蔵品を加えて、油彩48点、デッサン・水彩など98点、版画集5点の計151点により、いわば知られざるシャガールの全貌を明らかにしようとするものであります。20世紀がその最後の10年を迎えようとしている今日、この世紀を横断的に生きたシャガールの残した巨大な足跡を振り返ることは、近代へ向けて少なからぬ意義を有するものであると確信します。