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ミュージアム コレクション(終了)
第二次世界大戦末期、1945年4月の二回目の東京大空襲は、森芳雄(1908-1997)の恵比寿のアトリエにあった作品や家財道具をほぼすべて焼き尽くしました。終戦後、焦土と化した東京で、森芳雄は敗戦の痛手と共に、大切な作品を無くした喪失感から来る虚無感に苛まれました。窮乏の中、妻とふたりの幼子を抱え、森芳雄は当時の日本の置かれた苦しい精神状況を、男女ふたりの裸体像を通して見事に捉え、戦後の洋画界の金字塔とされる《二人》(1950年、紀伊国屋書店蔵)を描き上げました。森芳雄の画業の中心は親子の強い絆を描いた母子像、生命力溢れる裸婦像、若者を扱ったエネルギー漲る青年群像などの人物画です。風景画や静物画もありますが、いずれのテーマも周囲の身近なものへの優しい眼差しが注がれています。《二人》と同様に、人物画の場合は人を特定する顔の細部を描かず、暗褐色の落ち着いた色調を使い、面や線、陰影などで構成した独特の具象絵画で、人物を組み込んだ抽象画のようにも見えます。新しい具象絵画を切り拓こうとする意欲が感じられるでしょう。昨年、森芳雄氏の遺族や関係者から代表作を含む油彩、素描などの寄贈がありました。本展では新規寄贈品を初公開するとともに、これまでの所蔵作品3点を加え、抽象と具象の狭間で独自の画業を構築した森芳雄の絵画世界を紹介します。そして森芳雄と共に生き、新しい絵画の創造に全身全霊を傾けた世田谷の仲間たちの作品もとりあげます。自由美術家協会の盟友・山口薫、難波田龍起、武蔵野美術大学の同僚・麻生三郎、須田寿、そして森が関係した画廊のグループ展のメンバー同士である脇田和らの油彩作品も一緒に展示します。森芳雄と切磋琢磨しあった同世代の画家たちの名作が一堂に会することで、久し振りに世田谷のみならず、日本を代表する昭和の洋画壇の熱い思いが蘇るでしょう。本展は当館の収蔵品のみの展示ですが、初公開作品も多く、是非この機会にご高覧頂ければ幸いです。また、小コーナーでは駒井哲郎(1920-1976)の詩情豊かなモノタイプの版画作品をまとめて展示します。(会期中、展示替えを行います。前期展示8/3~9/29、後期展示10/1~11/24)
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2019年11月24日(日)まで、当館の2階の展示室では、ミュージアム コレクション「森芳雄と仲間たち」を開催中です。1985年から晩年の10年ほど、世田谷に在住していた森芳雄(1908-1997)作品36点(一部寄託作品を含む)をご紹介しています。森芳雄は、武蔵野美術学校(現・武蔵野美術大学)で、1951年から長い間後進の指導に尽力しました。本展では、重厚なマチエールと心温まる画風の森芳雄の作品に加え、森芳雄が所属していた自由美術家協会の盟友や武蔵野美術大学教授時代の同僚などの作品もご紹介しています。森芳雄の作品森が、若い時期に渡仏した際、先に滞在して世話をし、自由美術家協会の会員同士でもあった山口薫(1907-1968)と武蔵野美術大学で13年、森と一緒に教え、世田谷の作家たちの交流の場であった白と黒の会でも一緒だった須田寿(1906-2005)。山口薫と須田寿の作品森とは自由美術家協会の会員同士で、白と黒の会のメンバーであった難波田龍起(1905-1997 )と森とは自由美術家協会の会員同士で、武蔵野美術大学で30年間共に勤務していた麻生三郎(1913-2000)。難波田龍起と麻生三郎の作品彌生画廊や壺中居、フジカワ画廊、日動画廊、サエグサ画廊、資生堂ギャラリーなどのグループ展で一緒だった脇田和(1908-2005)。脇田和の作品どの作家も昭和の洋画壇を代表する作家です。コーナー展示では、資生堂名誉会長・福原義春氏からご寄贈いただいた、銅版画家・駒井哲郎(1920-1976)の色鮮やかなモノタイプ作品を展示しています。駒井哲郎の作品いずれも、世田谷ゆかりの作家たちです。是非ゆっくりとご鑑賞ください。9月14日(土)からは、1階の展示室にて、「チェコ・デザイン100年の旅」が始まります。写真パネルは、今回、多数の作品をお貸しくださったチェコ国立プラハ工芸美術館の建物です。ミュシャのポスターをはじめ、食器や家具など約100年の様々なチェコ・デザインをご覧いただけます。エントランスに展示されたチェコ国立プラハ工芸美術館の…是非こちらもお楽しみください。